2012年4月5日木曜日

アルミニウム - Wikipedia


外見



アルミニウムのスペクトル線
一般特性
名称, 記号, 番号 アルミニウム, Al, 13
分類 卑金属
族, 周期, ブロック 13, 3, p
原子量 26.9815386(13) g·mol-1
電子配置 [Ne] 3s2 3p1
電子殻 2, 8, 3(画像)
物理特性
固体
密度 (室温付近) 2.70 g·cm-3
融点での液体密度 2.375 g·cm-3
融点 933.47 K, 660.32 °C, 1220.58 °F
沸点 2792 K, 2519 °C, 4566 °F
融解熱 10.71 kJ·mol-1
蒸発熱 294.0 kJ·mol-1
熱容量 (25 °C) 24.200 J·mol-1·K-1
蒸気圧
圧力(Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1482 1632 1817 2054 2364 2790
原子特性
酸化数 3, 2, 1
(両性酸化物)
電気陰性度 1.61 (ポーリングの値)
イオン化エネルギー
(詳細)
第1: 577.5 kJ·mol-1
第2: 1816.7 kJ·mol-1
第3: 2744.8 kJ·mol-1
原子半径 143 pm
共有結合半径 121±4 pm
ファンデルワールス半径 184 pm
その他
結晶構造 面心立方格子構造
磁性 常磁性[1]
電気抵抗率 (20 °C) 28.2 nΩ·m
熱伝導率 (300 K) 237 W·m-1·K-1
熱膨張率 (25 °C) 23.1 µm·m-1·K-1
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(r.t.) (rolled) 5,000 m·s-1
ヤング率 70 GPa
剛性率 26 GPa
体積弾性率 76 GPa
ポアソン比 0.35
モース硬度 2.75
ビッカース硬度 167 MPa
ブリネル硬度 245 MPa
CAS登録番号 7429-90-5
最安定同位体
詳細はアルミニウムの同位体を参照

アルミニウム (羅: aluminium[2], 英: aluminium, aluminum) は、原子番号13の元素である。元素記号は Al。軽銀やアルミニウムをアルミと略すことも多く、「アルミ箔」、「アルミサッシ」、一円硬貨など非常に生活に身近な金属である。天然には化合物のかたちで広く分布し、ケイ素や酸素とともに地殻を形成する主な元素の一つである。自然アルミニウムというかたちで単体での産出も知られているが、稀である。

単体は銀白色の金属で、常温常圧で良い熱伝導性・電気伝導性を持ち、加工性が良く、実用金属としては軽量であるため、広く用いられている。熱力学的に酸化されやすい金属ではあるが、空気中では表面にできた酸化膜により内部が保護される。


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[編集] 単体の性質

単体は常温常圧では良好な熱伝導性・電気伝導性を持つ。融点933.47 K、沸点2792 K (別の報告もある)。密度は2.7 g/cm3で、金属としては軽量である。常温では面心立方格子構造が最も安定となる。酸やアルカリに侵されやすいが、空気中では表面に酸化アルミニウムAl2O3の膜ができ、内部は侵されにくくなる。この保護現象は酸化物イオンO2-のイオン半径 (124 pm) とアルミニウムの原子半径 (143 pm) が近く、アルミニウムイオンAl3+ (68 pm)が酸化物の表面構造の隙間にすっぽり収まることが深く関係している。また濃硝酸に対しても表面に酸化被膜を生じ反応の進行は停止する(不動態)[3][4]。陽極酸化による酸化被膜はアルマイトとも呼ばれる。

[編集] 化学的性質

アルミニウムは両性金属で、酸にも塩基にも溶解する。塩基性の水溶液では、以下の反応によって水が還元されて水素を発生する。

6 OH- + 2 Al + 6 H2O → 6 OH- + 2 Al(OH)3 + 3 H2

ただし、生成する水酸化アルミニウムの溶解度積 ([Al3+][OH-]3) は1.92 × 10-32であり、ほとんど水に溶解しない。したがって、薄い塩基では皮膜が発生して反応が止まる。しかし、強塩基条件では水酸化アルミニウムが次式によって水溶性のアルミン酸を形成するため、反応は表面のみでなく内部まで進行する。

OH- + Al(OH)3 + 2 H2O → [Al(OH)4(H2O)2]-

したがってアルミニウムと強塩基水溶液との反応はこれらの式を合わせて以下のようになる[4]

2 Al + 10 H2O + 2 OH- → 2 [Al(OH)4(H2O)2]- + 3 H2

[編集] 機械的性質

アルミニウムは鉄の約35 %の比重であり、密度は (2.70 g/cm3) と低く金属の中でも軽量な方に属し、展性に富む。純アルミニウムは強度は低いが、ジュラルミンなどのアルミニウム合金はその軽量さ、加工のしやすさを活かしつつ強度を飛躍的に改善しているため、様々な製品に採用され、産業界で幅広く利用されている(「用途」を参照)。

アルミニウム合金は軟鋼などと違い、応力がかかった時の変形に降伏現象を示さない。それは侵入型固溶体である炭素によるコットレル雰囲気を持つ鉄合金とは違い、アルミニウム合金には置換型固溶体合金が多いことに起因する[5]。よって、構造設計等の計算を行う場合には、材料力学では降伏点の代わりに「0.2 %耐力」が代わりに用いられる。「0.2 %耐力」とは、応力をかけた際の永久ひずみが0.2 %になる時の応力である[6]。こういった特性のために、アルミは押し出し成形や摩擦攪拌接合に向いている。

アルミニウムは、鉱物のボーキサイトを原料としてホール・エルー法で生産されるのが一般的である。ボーキサイトを水酸化ナトリウムで処理し、アルミナ(酸化アルミニウム)を取り出した後、氷晶石(ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム、Na3AlF6)と共に溶融し電気分解を行う。したがって、アルミニウムを作るには大量の電力が消費されることから「電気の缶詰」と呼ばれることもある。ちなみに、ホール・エルー法での純度は約98 %なので、より高純度なアルミニウムを得るには三層電解法を使う。アルミニウム1トンを生産するために消費される材料およびエネルギーは以下の通りである[5][7]

  • アルミナ 1.96トン(ボーキサイト 4トン)
  • 氷晶石 0.07トン
  • 炭素陽極 0.5トン
  • 電力 13000〜14000 kWh

電力価格が高いためコスト競争に弱い[7]日本国内のアルミニウム精錬事業は、オイルショック後採算困難になり、大部分は国外に拠点が移った[5]。現在、日本国内で原石(ボーキサイト)から製品まで一貫生産を行っているのは、自前の水力発電所により自家発電を行っているため低価格の電力が入手可能な日本軽金属(工場所在地は静岡市清水区)のみである。


どのように管

ボーキサイトからアルミニウムを精練するのに比し、アルミニウム屑からリサイクルして地金を作る方がコストやエネルギーが少なく済む。そのため、回収された空き缶等をリサイクル原料とし、電気炉等を用いる形態で再生するケースは徐々に増えている。アルミニウム屑を溶解するにあたっても融点が約660 °Cと銅や鉄などの主要金属の中では低い方なので少ないエネルギーで行うことができる。この利点をとらえて、アルミニウムはしばしば「リサイクルの優等生」や「リサイクルの王様」と表現される。

アルミニウムの生産量は2002年時点で2574万トンに及ぶ。中国が約1/6を生産し、これにロシア、カナダ、アメリカを加えた4カ国で生産量の過半数を占める。中国、ロシア、アメリカはボーキサイト原産国でもある。他のボーキサイト原産国であるオーストラリア、ブラジル、インドも世界生産量のシェア10位以内に含まれる。

アルミニウムは金属の中では軽量であるために利用しやすく、また、軟らかくて展性も高いなど加工し易い性質を持っており、さらに表面にできる酸化皮膜のためにイオン化傾向が大きい割には耐食性もあることから、一円硬貨やアルミホイル、缶(アルミ缶)、鍋、窓枠(アルミサッシ)、外構/エクステリア、建築物の外壁、道路標識、ガソリンエンジンのシリンダーブロック、自転車のフレームやリム、パソコンや家電製品の筐体など、様々な用途に使用されている。ただし大抵はアルミニウム合金としての利用であり、1円硬貨のようなアルミニウム100 %のものはむしろ稀な存在である。

有名な合金としてはジュラルミンが挙げられる。ジュラルミンは航空機材料などに用いられているが、金属疲労に弱く、腐食もしやすいという欠点を持つため、航空機などでは十分な点検体制を取ることが求められている。また、鉄道車両でも加工性が良く、軽量であることから、新幹線電車などでアルミ車体の採用例がある。なお、一時期自動車も航空機材料にならうかたちでアルミ化が進んだが、費用対効果を両立させるため、現在はアルミではなくハイテン材料(高張力鋼)の適用が進みつつある。

高圧送電線にもアルミニウム線が使用される。銅に比べ単位体積あたりの電気伝導度は劣るが、密度が低いため断面積を大きく取る(太くする)ことができ、かつ軽いので、単位質量当りの電気伝導度はむしろ銅を上回り、かつ材料費はほぼ拮抗する。このため、銅の価格高騰に伴い送電線に使われることが増えている。

熱伝導性にも優れ、調理器具にアルミニウム合金がよく利用される。熱伝導度についても銅に劣るが、銅よりも安価であるため広く使われる[4]

真性半導体であるケイ素に微量のアルミニウムを添加することにより、P型半導体が得られる。

俗に「銀ペン」とも呼ばれる、銀色の塗料には、アルミニウムの微粉末が顔料として加えられている。耐食性があるため、橋梁などの建築物によく使われた。

[編集] アルミニウム粉

粉末になったアルミニウムは可燃物であり、粉塵爆発を起こす場合がある。アルミニウム粉は燃焼熱が大きく、燃焼するときにガスを生じないため熱が集積して高温となり、強い白色の光を発する。これを利用して火薬類に発熱剤として添加される。スペースシャトルの固体燃料補助ロケットでも燃料として使用された。アルミニウム粉の性質は表面積の大きさによって左右されるため、等級は粒度ではなく重量当たりの表面積を示す水面拡散面積で表示される場合が多い。粒度で表示されるような粒の大きい物は粒状アルミニウム粉(アトマイズドアルミニウム粉)と呼んで区別することが多い。

スラリー爆薬などの水湿状態の火薬に混ぜるとアルミニウムの表面で以下のような反応が起きて発熱する。このため、アルミニウム粉の火災には水をかける事は禁忌とされている。

2 Al + 6 H2O → 2 Al(OH)3 + 3 H2

アルミニウム粉末は塗料に混ぜて使う場合もある。また、指紋の検出(主に警察の鑑識課による捜査活動)などでアルミニウムの粉を使用することもある。

アルミニウム粉と酸化鉄(III)との混合物はテルミットと呼ばれ、マグネシウムリボンで着火すると激しく反応し、酸化アルミニウムおよび溶融鉄を生じる。この反応は鉄の溶接にも使われているテルミット反応である。

日本の消防法では、150 µmの網ふるいを通過する量が50 %を超えるアルミニウム粉を第2類危険物と定めている。


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[編集] 人体への影響

人体へは摂取しても吸収される量は微量で、ほとんどはそのまま排出される。アルミニウムが体内でどのような役割を果たしているかは、まだよく分かっていない。血液透析装置の部品にアルミニウムが使われていたため、透析患者に痴呆症が発生したという事例があるが、これは血液に直接アルミニウムが溶け出したことが原因とされている。「アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こす」という議論もあるが、はっきりしたことは判っていない[8]

[編集] 植物への影響

アルミニウムは長石および粘土鉱物などとして普遍的に存在するため、地殻を構成する元素としては酸素、珪素に次いで3番目に多い(クラーク数:7.56 %、重量比)。工業的に多彩な用途が見出される一方、酸性土壌中のアルミニウム含量は、植物の成長に影響する重要な要素である。農業や園芸における人工的な栽培環境では中性付近に調整された土壌を用いる場合が多いが、それでも有害なアルミニウムイオン (Al3+) が根の伸長成長を阻害する事が知られている。

[編集] 作用機序

土壌中のアルミニウムは、pH が5.0を下回ると急激にイオン化して溶解度が高まり、pH 3.5ではほぼ完全に溶存体となる。水溶化したアルミニウムイオンが農作物その他の植物に及ぼす害として、以下のようなもの知られている。

  • 肥料として土壌に添加したリン酸と結合し、難溶性の塩を形成する。結果として施肥効率が低下する。
  • 根の成長阻害を引き起こす。アルミニウムイオンは根の細胞の細胞壁〜アポプラスト領域へ結合し、種々の応答反応を引き起こす。応答反応としてはβ-1,3グルカンであるカロースの分泌などが知られるが、成長阻害の具体的なメカニズムは分かっていない。

成長阻害に関する研究は今も進められているが、アルミニウムが活性酸素の発生を促し、脂質の過酸化やミトコンドリアの機能障害を引き起こすとする意見が有力である。

[編集] アルミニウム耐性植物

コムギやトウモロコシ、アジサイ、ソバなど一部の植物は、アルミニウム耐性を持つ(あるいは高アルミニウム環境にも適応し得る)事が知られている。アルミニウムを無毒化するメカニズムは様々であるが、一般にカルボン酸(シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸など)を中心とした有機酸でアルミニウムイオンをキレートし、水溶性の錯体を形成する機構によると言われている。

アルミニウム耐性に関与する遺伝子は最初にコムギにおいて発見された。耐性関連遺伝子はトウモロコシからも見つかっている。これらの植物においては単一の遺伝子によりアルミニウム耐性が実現されているが、全ての植物のアルミニウム耐性が同一の機構によるわけではないと考えられている。

[編集] アルミニウム耐性土壌菌

遺伝子組み換えによりアルミニウム耐性植物を作出する際、その遺伝子源として注目されているものに、土壌性のアルミニウム耐性菌がある。根粒菌として知られる Rhizobium もアルミニウム耐性菌の一種である。強酸性 (pH 3.0) 高アルミニウム条件にて選抜されてくる菌はほとんどが糸状菌であり、従ってアルミニウムの多い土壌ではこれらの生物が優占していると考えられる。以下はアルミニウム耐性菌を含む属の一部である。


[編集] この節の参考文献

  • アルミニウム耐性土壌菌の選抜 金澤 晋二郎 PDF
  • 山本洋子 (2002). "アルミニウムによる根伸長阻害の分子機構". 根の研究 11 (4): 147-54.  PDF
  • Tashiro M, Fujimoto T, Suzuki T, Furihata K, Machinami T, Yoshimura E (2006). "Spectroscopic characterization of 2-isopropylmalic acid-aluminum(III) complex". J Inorg Biochem 100 (2): 201-5.  PMID 16384602
  • Ma JF, Hiradate S, Nomoto K, Iwashita T, Matsumoto H (1997). "Internal Detoxification Mechanism of Al in Hydrangea (Identification of Al Form in the Leaves)". Plant Physiol 113 (4): 1033-9.  PMID 12223659

合金についてはアルミニウム合金を参照。

  • 1807年 - イギリスのハンフリー・デービーは水素気流中で融解アルミナを電気分解する手法でアルミニウムと鉄の合金を得た。鉄はアルミナの不純物によるものであった。合金からアルミナを生成できたため、何らかの未知の元素の存在が確認できたことになる。デービーはアルミニウムの硫酸塩であるミョウバンを表すラテン語の単語 Alumen から、未知の新元素を Alumium と名付けた。
  • 1825年 - デンマーク物理学者エルステッドが、塩化アルミニウムをカリウムアマルガムにより還元し、世界で初めてアルミニウムの単離に成功した。ただし水銀などの不純物が多かったとされる。カリウムを還元剤としたため生産性は極端に低く、貴金属としての扱いを受けた。
  • 1827年 - ヴェーラーが塩化アルミニウムをカリウムで還元して純粋なアルミニウムを得たため、ヴェーラーをアルミニウムの発見者とすることもある。
  • 1846年 - フランスの科学者ドビーユがエルステッドの手法を改良し、カリウムの代わりにナトリウムを用いる還元法を開発した。生産コストを下げることに成功し、電解法も開発した。
  • 1855年 - ドビーユは粘土から電解法で生産したアルミニウムをパリの万国博覧会に展示した。出品タイトルは「粘土からの銀」であった。展示を見たナポレオン3世はドビーユに援助を始める。目的は甲騎兵の防具を改良するためであった。また、皇帝夫妻専用にアルミ製食器を作らせ、晩餐会では銀製食器を使う来賓の前でこのアルミ食器を自慢して食事をした。
  • 1886年 - アメリカのホールとフランスのエルーがアルミナと氷晶石を用いた融解塩電解法をそれぞれ独自に発明した(ホール・エルー法)。これは今日でも利用されている手法である。
  • 1888年 - オーストリアのバイヤーが、ボーキサイトから高純度のアルミナを効率的に製造する方法を発明した(バイヤー法)。
  • 19世紀後半 - 電気精錬の手法が進歩するが、肝心の発電、送電技術が未熟であり、生産性は依然として低いままであった。
  • 20世紀中〜後半 - 大規模で効率的な発電所の建設が可能になるとともに、送電システムが確立された。大規模な電気精錬が行えるようになり、大量生産が可能となった。

[編集] 関連項目

[編集] 物質

[編集] アルミ製品

[編集]

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